OB/OG紹介 – 自転車世界一周(ミキハウス):坂本達さん

4年以上という異例の有給休暇をもらい自転車世界一周した坂本達さんに聞いた!なぜ内閣府主催の東南アジア青年の船事業に参加し、何を得たのか?

第18回「東南アジア青年の船」参加青年
第31回「東南アジア青年の船」ナショナルリーダー

子供服で有名な企業・ミキハウスの会社員という立場を継続しながら、社長を説得して異例の有給休暇を得て自転車で4年3カ月「43カ国、55,000km(地球一周は約40,000km)」の世界一周、日本縦断 、そして2015年からは会社の理解を得て毎年約3カ月を、奥様と2人の子どもと一緒に「世界6大陸大冒険」と題し、自転車で世界中の家族と文化交流をする坂本さん。

その経験を活かし、勤務と並行しながら積極的に講演活動を行っており、取材映像や記事は多数あり。そこで今回は「内閣府の船事業での参加エピソード」と「その事業から得たこと」を中心に話を伺ってみました。

坂本達さんプロフィール

その経歴だけを見ると順風満帆、かつサラリーマン特例の人生で、内閣府の青年国際交流事業の経験は必要ないように感じるかもしれません。しかし坂本さんは「必要で大切な経験でした」と語ります。彼はなぜ参加し、今までの活動に至っているのでしょうか?

大学時代に団員として参加 ~周囲はツワモノばかりで苦い経験!~

――内閣府の事業に関わることになったきっかけは何ですか?

学生時代、バックパッカーで世界を周り終えたころに内閣府の事業の存在を知りました。船の事業は今までにない形で世界と関われると思い、ちょうど申し込み時期だったので応募し、東南アジア青年の船(第18回)の代表青年に選ばれました。

ただ、実際に乗ってみると、英語が堪能だったりディスカッションが上手いなど、俗に言う“できる人”がばかりで、自分の役割がわからなくなって、自分の中の壁にぶち当たりました。今思えば貴重な経験ですが、当時は正直に言って楽しめなくて、つらかったですよ。とはいえ、途中で嫌になっても船の上なので、研修含めて約2カ月間は逃げられませんからね(笑)。

――その中でも収穫は?

今までに出会ったことのないレベルの人たちと交流することにより、国や社会に貢献する国際交流のあり方を目の当たりにできたこと。そして時空を越えて付き合えるファミリーが、アセアン各国と日本にできたことです。期待以上の収穫でした。

チャンスを得てリーダーの立場で乗船 ~事後活動の1つとして~

――経歴では、自転車の世界一周、日本縦断の後にナショナルリーダーとして参加とあります。

はい、この事業の目的の1つに、参加後の青年は事後活動をすることが前提なのですが、学生時代の最後に乗船してすぐ社会人になったので、ほぼ活動ができていませんでした。

何らかの形で関わりたい思いを抱きながら、自転車の世界一周から帰国した後に、事業OB/OG組織である日本青年国際交流機構(IYEO)の広報誌にその体験談を書かせてもらう機会を得ました。

さらに「この世界一周の経験を活かせないか」との思いでいた矢先、日本青年のリーダーとして乗船してほしい、と当時のIYEO会長から話をいただいたのです。

もちろん会社員ですが、4年以上の自転車世界一周を特別に許可してもらった経緯がありますので、「またいなくなるんですけど・・・」と丁寧に会社に趣旨を説明して許しを得て、乗船できました(笑)。

――2回目の船に乗って1回目との違いや得たものは?

自分の役割がわからなかった学生当時を振り返ると、当時はどこかで「失敗したら嫌だな」という変なプライドがあった気がします。

そんな過去を経ての2回目は、 学生時代に参加した時とは立場も異なり、若い人に何かを伝えたいという想いがありました。 世界一周の体験を通じて、考えすぎずにチャレンジしてみることや、自分をさらけ出す姿を見せることも大事だという気持ちで参加青年と向き合いました。

また自転車で世界一周した経験を通じて学んだ3つのシンプルで大切なこと、「自分からあいさつ」、「常に感謝」、「個性を発揮」を伝えたくて、いろいろな場面でそのメッセージを伝えるように心がけました。

時間を共にした第31回東南アジア青年の船の参加青年たちはとても仲が良くて、能力のある人が集まっていたので、その仲間たちと関わることで私自身もたくさんの学びがあり、素晴らしい経験になりました。

さらに1回目同様、ASEAN諸国の“普段会えない人”に出会えたことも本当に魅力で、お金を払ってでも欲しいくらいの経験でした。

大事な仲間の存在 ~この事業がなかったら出会えない一生の財産~

――内閣府の事業は、現在の活動にどんな形で活かされていますか?

一言で表すと、絆でしょうか。

例えば、昨年に家族4人でブルネイやマレーシアをサイクリングしたのですが、これまでの繫がりが続いていて、現地で再会した瞬間にファミリーのように接することができるんです。

子どもから「お父さん、日本より友だち多いね」と言われたぐらいです(笑)。

ナショナルリーダーをした時の大切な参加青年と現在も強く繋がっていますし、この事業がなかったら経験できなかったことです。

――事業OB・OGや、これから参加を検討している人へのメッセージを。

企業の人事担当者として多くの大学生に会う中で感じるのが、「たくさんの経験をすることの大切さ」です。成功体験は大事ですが、失敗したり、悩んだり、ショックを受けたり、恥をかいたりするのも必要なことだと思います。 この事業でしか得られないものをつかんでください。

とにかく経験は何事にも代えられない宝物。フォローが必要なときもありますが、失敗した経験をどうとらえ、どう活かしていくかが大事なのです。

OBやOGに向けては、「ごく限られた人しか経験できない宝物を、どんな形でもいいので自分なりに社会にペイフォワードしよう」と伝えたいです。

日本に来ている外国人を助ける、声をかける、ホームステイを受け入れる、事後活動に参加するなど日々の生活の中でできることはたくさんあります。世界各国で受け入れてもらったお返しに、日本を好きになってもらう、家族でおもてなしをする、とにかく経験を社会に還元できる魅力的な人になってもらいたいですね。

――ありがとうございました。

【インタビューを振り返って】

著作を読み、取材させていただき感じたのは、ご本人は表情豊かにやわらかく会話される中でも、相当の覚悟と試行錯誤があったこと。「常に先を考え、終わった時の軌道修正が大事」「20くらい考えてやっても、その時のタイミングを含めて1つできているくらい」と実情を聞き、経験とさらなる行動、思いを伝えて改善を重ね続けることの大切さ、を感じた。

また、思いを形にするには、会社や家族など周囲の理解や環境も欠かせない。現在は、勤務では春の新卒採用活動を中心に担い、業務の少し落ち着く6~8月に家族と自転車で世界各地を巡る坂本さん。最初は乗り気でなかった奥様も帯同し「一緒にやってくれる人がいたからこそできた」と感謝する。その信念には「1人でやろうとしていた時はうまくいかなかった。方向が一緒の人を見つけるために、仲間ができるように、日ごろの暮らし方や立ち居振る舞いも大事」と語る。

小さな子供を連れて世界を自転車で周ることに疑問を寄せられることもあるそうだが、身近な人たちや会社の仲間の応援を受け、「どこまででもがんばれると思った!」と坂本さん。さらに経験を重ねて生まれる、今後の活動にも注目です!

今回は内閣府の国際交流事業とその後の国際交流活動に絞ってインタビューしました。自転車旅の話など興味のある方は随時、全国各地で講演会が開かれているので、ぜひ坂本達さんのウェブサイトと、合わせて著作をチェックしてみてください。


坂本達さんの著作


5月に行われた講演会。ユーモアたっぷりで語り、終始なごやかな空気に包まれた。「世界6大陸大冒険」後の9月から日本各地で講演活動を行う予定という。「子どもたちに特に聞いてもらいたい」と坂本さん。

インタビュー担当:岡田紘幸(日本・中国青年親善交流事業参加)

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