OB/OG紹介 – 和太鼓演奏家:座古瑞穂さん

今回は、和太鼓演奏家の座古瑞穂さんにお話を伺いました。インタビューの後、太鼓のお稽古も見学させていただき、改めて太鼓の持つ力強さを感じ、全身に響く振動が爽快でした。

参加された事業とそのきっかけは?

参加したのは、1992年の東南アジア青年の船です。中学生の時、担任の先生がJICAでの活動体験を話してくれたり、インドネシアとの交流事業に参加する機会があったりと、小さい頃から日本の外に向く目を持っていたと思います。大学生の時、同学科の院の先輩に秋篠宮紀子様(xPYかつ和太鼓の先輩)がいらして、先輩から事業のことを聞くこともあり、社会人になる前に、昔から興味があったこの事業に参加してみよう、と応募を決めました。

現在のお仕事について

大江戸助六太鼓専属プレイヤーです。今の仕事との出会いのきっかけとなったのが、まさに東南アジア青年の船への参加でした。船上では「ジャパンデー(文化紹介)」というのがあり、海外の青年たちに日本の文化を紹介するため、乗船前に準備活動をします。その年のテーマが「祭り」で、もともとアクティブなことが好きだったので、「祭り」→「盆踊り」→「太鼓」という発想で、メンバー8人を集めて太鼓を学ぼうということになり、今の事務所にてお稽古をつけていただきました。

メンバー8人の絆も強く、みんなで一生懸命練習しました。船上では、私の事業参加者との交流のほとんど全てが太鼓を通じてのものとなり、言葉が通じなくても伝わるものを強く実感し、これを続けたいと思い、下船後すぐに入門しました。

今では日本国内はもちろん、海外で教えることもあります。太鼓は外国の方に日本を知ってもらう上で一つのツールであり、私の良きパートナーです。

太鼓の魅力とは?

太鼓は自分を浄化してくれるというか、素にさせてくれます。特に、ドラムロールというひたすら打ち続ける練習をしたりしていると、頭が冴えてきていろいろないいアイディアが生まれたりもします。

太鼓の音は、胎児が母体で聞く心臓の鼓動だとも言われています。太鼓の胴体部分は、樹齢200〜300年ほどの欅の木をくりぬいたものです。その木の命をもらいうけた神聖なものです。

面白いことに太鼓にはその人の性格が出てしまいます。浅い考えだと浅い音しか出ないし、どれだけ心を尽くして音を出しているかは、聞く人が聞けばすぐに分かります。太鼓本来の音は、打っている面から音を出すのではなく、バチで面を打ち抜くとその音が中を伝って反対側の面が震えて音が出るのです。ですから、自分が打つというよりは、太鼓が鳴るのをお手伝いするという感覚です。「美しい型に美しい音が宿る」と言われていて、いい音が出るようにどんな角度でどう打つか、お稽古でも同じことを繰り返して美しい軌道を体にしみこませます。また、左右均一な音を出すには、右利きの方は普段使わない左を強化する必要もあり、きちんと打てるまで通常3~5年はかかります。

さらに、太鼓は1人で打つものではなく、皆で合わせるものです。それぞれ違う他人同士が太鼓を打つことで一つになれる瞬間があり、そこで生まれたエネルギーを、それを聞く人に届ける気持ちで打っています。

次世代リーダーの育成

外国が身近になった今、近い分、自分がしっかりしていないと埋もれてしまうような気がします。おそらく、日本のことを聞かれたときにきちんと答えられない人も多いかと思います。日本では、2002年からようやく学校でも和楽器の授業が取り入れられるようになりましたが、まだまだこういった方面の環境は不足していると思います。

太鼓には、それに向き合う人を謙虚にさせる力があります。太鼓を打てば自分が何者かを考えざるを得ません。また、お稽古が「教わる場」なので、謙虚にお手本を見る目、真似をすることや、一度自分を捨ててまず受け入れるということを学びます。これは簡単なようでなかなか難しいことです。私は、太鼓を教える際にリーダーの育成という観点で接しているわけではありませんが、これからの人たちにはそういう謙虚さや柔軟性といった資質が必要だと思いますし、継承されるべき日本人固有の文化を日本人としての資質として携える人が増えていき、それをもって海外と渡り合ってもらえたらと考えます。

内閣府事業で受けた影響とは?

やはり太鼓に出会えたこと、そしてそれを通じた仲間とのつながり、上下のつながり、海外とのつながりというのが大きいと思います。文字通り、人生が変わりましたから。下船後に大江戸助六太鼓に入門して、ありがたいことに4年目からプロの演奏に出させてもらえるようになりました。当時は、国際協力団体に勤めながら週3ほど通っていて、有休のほとんどをお稽古や演奏のために消化していました。7年目でフランスツアーに誘われたときには、もう有休を使い果たしていました。希望する職種でやりがいもあり、また会社に迷惑をかけたくないという思いもありましたが、何より一つのことを貫いておられる宗家の背中がかっこいいと感じて、この道に進むことを決意しました。以来、生活の中心が太鼓となり、また形を変えて国際交流の橋渡しをさせていただいていると感じているので、そのきっかけを与えてくれたこの事業には、本当に感謝しかありません。

これから参加する人へ

本当にいろんなことを吸収できる事業ですし、少しでも興味を持ったなら思い切って飛び込んでください。最近は、社会的な気風として、何事にも「まず明確な目標や夢が必要」みたいなことも言われますが、たとえそういうのが無くても、ただぼんやり「行ってみようかな」でも大丈夫です。写真を見ても既参加青年の話を聞いても、体験しないとわからないことばかり。とにかく参加してみることを勧めます。全てに好奇心と真っ白な心を持って臨めたら、きっと何か見つかるはず!

インタビュー担当:大脇 小百合(第40回日本・中国青年親善交流事業参加)

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